1-click Award

1-click Award Show #3 公開審査会レポート

2009年1月16日(金)
ガーディアン・ガーデン(リクルートG7ビル セミナールーム)

インタラクティブ部門

審査員
麻生哲朗(タグボート)
秀親/塚田哲也(大日本タイポ組合)
田中偉一郎(アーティスト)
田中耕一郎(Projector inc.・クリエイティブディレクター)
中村洋基(電通・テクニカルディレクター / プログラマー)
大迫修三(クリエイションギャラリーG8)

「画期的なマウス・インタラクション」対「時代と人の気持ちを捉えた作品」。最後は、高い完成度で勝負がつきました。

公開審査会では、まず全20作品が講評されました。それぞれの作品を見ながら、7名の審査員が意見や印象を遠慮なく語り合う姿に、会場は時に真剣に耳を傾け、時に笑いの渦に包まれながら、審査はよどみなく進行していきます。(各作品へのコメントは後にまとめましたのでご覧下さい)。
その後、審査内容を受けて各審査員が最終審査投票を行いました。その中で3票以上を集めた5作品(○△□/16小節のカブソング/500ピクセル走/ぽっぽちゃんのごはん/ころころ)で議論となります。改めて、各審査員が1位作品を投票。
結果、田中偉一郎さん、田中耕一郎さん、中村さん、大迫さんの4人が1位に押した<ころころ>が最優秀賞に輝きました。「今の時代に合っている」と麻生さんが一押しした<16小節のカブソング>は、「最優秀賞2つでもいい」(田中偉一郎さん)というほど評価が高いものでしたが、「今までにない画期的なマウス・インタラクションのアイデアと完成度」(大迫さん)の<ころころ>に惜しくも及ばず、優秀賞となりました。
<○△□>は、麻生さんの「ここにある他の作品とは違うアイデアを持っている素晴らしさを評価したい」という意見をきっかけとして優秀賞に浮上。<500ピクセル走>の「移動した時間を争う」(大迫さん)切り口の新しさ、<ぽっぽちゃんのごはん>の親しみやすいマウス・インタラクションも高く評価されました。

各審査員の総評

  • 自宅で見るのとは違う感覚で、それぞれの作品の良さが見つけられたり、もっとこうしたらいいんじゃないかということを会話できたことが有意義でよかったと思います。
    秀親さん
  • 1-clickというお題に対して、全然違うものが出てきて、それを見ているだけで楽しかったです。「僕らも頑張らんといけんな」と感じさせられました。
    塚田哲也さん
  • 切り口の多さに、個人的にとても刺激を受けました。最終的には、その切り口がある種の感情や気分を作り出せている作品が確実に残ったように思います。納得のいく審査でした。
    麻生哲朗さん
  • 自分がWebを作り始めた頃、「純粋にこんなインタラクションがあったら楽しいよな」と考えていた頃を思い出させてくれる作品が多く、初心に帰ることができました。ありがとうございました。
    中村洋基さん
  • 有名作家や漫画家の書きはじめの作品には、実験的なおもしろいものが多いのですが、公募展はそういうものに近いと思います。将来、この中の方がビッグコンテンツを作った時に、昔はこういう作品を作っていたんだと思える場になると楽しいですね。
    田中偉一郎さん
  • この仕事を何年も続けていると、どうしても自分の発想がある決まった方向に偏ってしまいがちになります。皆さんのさまざまなアングルからの作品を見ていて、改めて、自分が発想しずらいアングルからもものを考える必要性を再認識させられました。
    田中耕一郎さん
最優秀賞

  • ころころ
    筒井 拓真
  • ◆マウス・インタラクションの新発見! ホントにチョロQの操作感と同じなのにビックリしました。一押し。(中村) ◆マウスをひっくり返すと、チョロQというアフォーダンスがあった、ということを発見したことがすごい。(田中耕) ◆強く引っ張ると、その分進む。前に引っ張れば、後ろにも進む。細かいところもよくできています。表現の壁を壊してくれた作品。(田中偉) ◆過去2回にはなかったタイプ。画期的な新しさと完成度を備えた作品だと思います。(大迫)
優秀賞

  • ○△□
    青嶋 未紅
  • ◆一押しの作品です。単純にかわいい! いじっていて楽しい。(秀親) ◆僕も好き。ローテクで、クリックの原点が感じられる。純粋に楽しいのが好感持てます。タイトルバーの細かい仕掛けも気が利いていました。(塚田) ◆子供がずっとクリックしていくだろうなと思う。(田中耕)  ◆子供の絵本の、原始的な楽しみ方が表現されている。それがWebという場所になったことで、より自由になっている。Webの可能性がよくわかっている、意外に大人の作品だと感じました。(麻生) ◆形だけじゃなくて、色の配置もけっこう考えて配置されていますね。(田中偉)
優秀賞

  • 16小節のカブソング
    面白法人カヤック ブッコミイレブン
  • ◆完璧ではないけれど、株価の変動という味気ないものを「メロディ=気持ち」にするところに目を付けたところはすばらしい。この時代にもピッタリ合っている。企業名を歌詞にしてつけたらおもしろいんじゃないでしょうか。(麻生) ◆Web上のデータを翻訳するのは個人的に好きな方法です。意外性もOK。株価は毎日見るものだし、それをインタラクティブにする視点はいい。単なる電子音じゃなくて、ピアノなどの音に変えたほうが日々耳にする音としていいと思います。(田中耕)
田中耕一郎賞

  • EXPRESSCOPE
    坪井 健
  • ◆物語をシンプルに表現できている。もう少しで仕事に使えそうなレベル。かなり完成度は高いと思います。(田中耕) ◆電車の速さと、スクロールのスピード感がちょうど合っている。その辺りのことが、よくわかっている、よく考えられていると思いました。(塚田) ◆丁寧でシンプル。好きなタイプ。(中村)
大日本タイポ組合賞

  • 0-click
    青木イチロウ×升田学×安田寿之
  • ◆タイトルだけで好き。いい意味で、1-click Award狙いというのがにじみ出ている。(塚田) ◆1-clickしたら始まるんじゃなくて、「終わる」というのが、企画の目線としておもしろい。「死」という悲しいコンセプトを上手に扱っていて、大人っぽい感じがします。(麻生) ◆タイミングが気持いい。全体的に丁寧に作られている感じ。(中村) ◆スクリーンセーバー的。使い道を考えさせられました。(田中偉) ◆最後のツメがよくできて、ずっと見ていたくなります。(田中耕)
麻生哲朗賞

  • 500ピクセル走
    宗田 憲治×篠原 史樹
  • ◆Webの技術に上手下手があることを、この作品ではじめて知りました。うまくいかないと悔しいから何度もやっちゃうんだよね。(麻生) ◆下から上にマウスを走らせるのが難しい。その辺りの作りは巧妙。(田中偉)◆発想はとてもいいと感じました。ただ、通常は100m走だから、100ピクセル走でいいんじゃないかと思うし、周囲のキャラクターとか、無駄なものが多いかもしれない。(田中偉) ◆無料でWeb上にあったらハマる人がたくさんいると思う。(中村)
中村洋基賞

  • 牛舎
    佐々木 遊太
  • ◆どうして真ん中の牛が押せないのか。画像の粗いのはなぜか。全部気になってきます。大好き。(中村) ◆パッと見の強さを感じる。ズルイ。(秀親) ◆見ていると、周囲の余白まで計算し尽くされているように見えてくるんだよね。(塚田) ◆微妙な揺れも気になりますね。(大迫) ◆「手元にある素材で一番おもしろいものを作る」という方法としては、かなりいい線。(田中偉)
田中偉一郎賞

  • ぽっぽちゃんのごはん
    高津戸 壮×中尾 仁士
  • ◆絵がキモい。操作が気持ちいい。題名がダサい。そのジャンク感はWEB、PC環境では、ヌルッと強い。(田中偉) ◆このマウス運動が面白い。これも子供が時間を忘れてやり続けてしまいそうな作品ですね。(田中耕) ◆皆、ビジュアルはあまり好きじゃないのにもかかわらず、かなり評価の高い作品ですね。確かに、自然に手が動いてしまう。(大迫)
オーディエンス賞


  • 黒尾 哲×佐々木 徹
  • オーディエンス賞は「雨」に決定!
    1-click Award Show #3の会期中、ご来場いただいたお客様に、人気投票をしていただきました。その結果、黒尾哲さんと佐々木徹さんが制作した「雨」がオーディエンス賞を獲得されました。
    作品に寄せられた感想を一部ご紹介します。
    ◆自分が入力した文字(悩み)がそのまま動きがある画像に取り込まれて、それをクリックすることでまた変化が生まれて面白かった。音も最後のメッセージも良かった。 ◆クリックの数によって最後のメッセージが違っていて何回も試したくなった。作品に励まされた。 ◆毎回メッセージが違うのと、雨が降ってくるのを見てると気持ちがいやされた。 ◆「クリックする面白さ」を追求した作品ではないかもしれませんが、すごく心が温かくなりました。街のどこかに置いてあったらきっとみんなが優しくなれるはず。

一次審査通過作品


  • リフティング
    井上 尚哉

    ◆何も考えなくていい感じがいい。(塚田) ◆普通なら何か変えようと思うけどね。(秀親) ◆昔のGIFアニメの雰囲気。たまには違う動きも見たいかな。(中村) ◆「クリック」の身の丈に合った表現なのかなと思います。(田中偉) ◆一番プリミティブな作品。(大迫) ◆質感の良さで持っている。(麻生)

  • sec.Color
    猪口 雅明

    ◆コンセプトはいいけど、惜しい。真ん中は普通に時間でいいんじゃないかな。(麻生) ◆作りがバレちゃうのが惜しい。製品感が感じられる点はいい。(田中偉) ◆発想は秀逸でした。メディアアート的な方向に磨くと、もっとよくなる。(中村)

  • 逆吹き替えカラオケ
    宇都宮ウエブ制作所

    ◆いい曲を選んでいると思います。(塚田) ◆ちょっとやってもいいかなという気分にさせられるのは良い所。(秀親) ◆口の動きが音楽とピッタリ合うと、おもしろい。(中村) ◆このコンテンツを何に使うのかという視点が入ったら、さらにわかりやすくなったと思います。(田中偉)

  • webコンテンツ
    大西 拓人(cshool)

    ◆黒いスクリーンは確かにホコリが目立つし、企画はいい。ただ、イラっとさせられるのも事実ですね。そこが消化できれば最高。(中村) ◆ムダなことを製品化するっていうところは好き。(田中偉) ◆タイトルが思わせぶりだったらもっといい。(塚田)


  • 黒尾 哲×佐々木 徹

    ◆ほっこりするから好き。(中村) ◆クリックと悩みをひっかけて、「クリックにも悩みにもたいした意味はないよ」と伝えている。そういう意味で、意味があると思います。(田中偉) ◆悩みを打ち込むという行為そのものがいい。打ったことで、人は悩みをだいぶ解決できるんじゃないかな。(麻生) 

  • LIFE
    佐藤×木村×板垣

    ◆2度できないという発想はとても新しいですね。(秀親) ◆人生は後に戻らないというのは、確かにその通り。(田中偉) ◆アイデアはとても秀逸。ただ、一度やったかどうかをIPで判別するというのは少しやりすぎかも。PCレベルでの判別ができたら、ベストじゃないでしょうか。(中村) 

  • prototype1000
    佐藤 ねじ

    ◆作品数が多くて、アイデアの粒もけっこう揃っていますね。(田中偉) ◆努力賞。丁寧にできていました。クリックのカタルシスは感じないけどね。(麻生) ◆これはわざわざWebメディアを使わなくてもいいでしょう。このアイデアがもったいない。(秀親)

  • 無駄知識は素晴らしい
    清水 宏積

    ◆全体的にシンプルな作りがいい。(中村)◆構造そのものはよくできていると思うけど、ネタは「無駄知識」じゃなくてもいいですね。必然性をあまり感じない。この構造は、他の何かに転用できると思います。(田中偉)

  • Wreckage of Art - 芸術の残骸
    西村 斉輝

    ◆途中で飽きることなく、ずっと見ていられるところはいいと思います。(麻生) ◆技術的にすごい。こういうことができるんですね。名画の他にも、この技術に合ったおもしろいネタがあるんじゃないかという感じがしました。(田中偉) 

  • DRIVING GAME
    長谷川 司

    ◆酔っ払い運転の感じはよくできてますね。(中村) ◆僕はこれ、最後までクリアしてしまったんですが、そうすると何もなくなってしまう。最後に何か起こして欲しかった。もう1つアイデアがあれば。そこが惜しい!(秀親)

  • cumbrella
    宮崎 梓×阿津坂 智子×安藤 達也

    ◆カワイイ。(秀親) ◆丁寧に作られている。もう一ひねり加えたら、相当おもしろくなりそうな感じがします。(麻生) ◆作者の方は、マウスの矢印が傘の閉じた感じに見えたことから、このアイデアを思いついたのでしょう。そのアイデアが秀逸。それだけで拍手を送りたいと思います。(塚田)

  • ドジボット
    山下 克樹

    ◆仕立ての良い感じがする作品。(麻生) ◆努力して作っていますね。手間ひまかかっていると思います。(田中耕) ◆作者の方の、好感の持てる人柄がよく現れているという印象を受けました。(中村)

プランニング部門

審査員
田中耕一郎(Projector inc.・クリエイティブディレクター)
中村洋基(電通・テクニカルディレクター / プログラマー)
田中達也(リクルートメディアコミュニケーションズ・クリエイティブディレクター)
日野貴行(リクルートメディアコミュニケーションズ・クリエイティブディレクター)

夢のつまった壮大な企画が、審査員全員を驚かせました。

『Webを中心に、新しいコミュニケーションプランを考えてください』という超難題に、“ワンアイデアで心を動かす”企画が集まったプランニング部門。一次審査を勝ち抜いた5作品が最終審査に進み、15分間のプレゼン&質疑応答で最優秀賞を競いました。異なる視点のユニークな企画に審査は難航。そんな中、壮大なスケールで審査会場を湧かせた<RAIN MAKER>と、世界規模で浸透しそうな完成度の<Supporter's Voice>が決戦討議へ。企画の瞬発力で勝る<RAIN MAKER>が、よりアワードのコンセプトに相応しいと最優秀賞に輝きました。作者の岡田さんは前回最優秀賞を逃した雪辱を晴らし、感動の受賞。優秀賞には<Supporter's Voice>と、個性的な視点と秀逸なプレゼンが際立った<トイレファイト!>が受賞しました。惜しくも入賞を逃した作品含め、審査が「ここをブラッシュアップしたら…」などブレストに発展するなど、審査員を本気にさせたハイレベルな企画揃いでした。

各審査員の総評

  • インターネット上でのコミュニケーションを企画する際には、Webメディアをどう使うか、人とコミュニケーションするための文脈をどう発見するか、メディアそのものをどういう風に作りあげるか、というところに可能性があると思います。受賞作品は、3つともそういう視点で優れていました。
    田中耕一郎さん
  • 残念ながら落選してしまった方のものも含めて、全ての企画がおもしろかったです。プレゼンしてくれた皆さんの技量もそれぞれ魅力的で、私自身、非常に勉強になりました。ありがとうございました。
    中村洋基さん
最優秀賞

  • RAIN MAKER
    岡田尚樹
  • 「私の町に雨を降らせてほしい」その思いをサイトに書き込み、一定人数の支持が得られれば、航空部隊「RAIN MAKER」が出動。目標エリア上空で、クラウドシーディング(雲の種まき) と呼ばれる手法で、降雨を促進する物質 (ドライアイスやヨウ化銀) を空中散布。人工降雨をプレゼントする壮大なプロジェクト。
  • ◆アイデアの質がぶっちぎりでした。視点もいいですし、世の中をよく見ていらっしゃいますね。しかも、これだけ大掛かりなのに、実現可能というところがまたすごい。(中村) ◆古代から多くの人が思い続けてきた「雨よ降れ」という想いを、新しいメディアの使い方で見事に解決していますね。体験する人が感情を残していくところに、企画の可能性があります。(田中耕)  ◆アイデアを思いついただけにとどまらず、ストーリーまで丁寧に落とし込まれているところがいい。(田中達) ◆雲の彼方から航空部隊が雨を降らせて飛んでいく…その画を思い浮かべるだけでワクワクします。(日野)
優秀賞

  • Supporter's Voice
    藤後亮平・鈴木義大
  • 世界中のサポーターの声をサッカー競技場に届ける、インターネットを介した新しい応援のカタチ。ケータイから送られた応援(click)を数値化し場内のスピーカーから出力する「Voice 」応援メッセージをリアルタイムで場内スクリーンに流す「Message」。世界中のどこからでも選手に声援を届けられる。
  • ◆もう実現したほうがいいんじゃないかというレベル。今の若者はPC以上にケータイを使い慣れていますし、現実的によくできている企画だと思います。(中村) ◆素晴らしいですね。今すぐ日本サッカー協会に提案するべきです。(田中耕) ◆パブリックビューイングに並ぶサッカー観戦の新たな常識になりえそう。アウェーの試合でも観戦で勝てるかもしれないというのは、サポーターも燃えるでしょうね。(日野)
優秀賞

  • トイレファイト!
    佐藤祥子
  • トイレで大をしている人の、約60%が困難を感じているデータに着目。用を足している途中の人が、エールを送りあえるメッセージ機能や音を掻き消す「携帯音姫」、すっきりしない思いを書き流せる掲示板を備えた、一人きりの空間を応援する携帯キャンペーンサイト。
  • ◆トイレという場・メディアでしかできないコミュニケーションを丁寧に考えられている。「携帯音姫」などは、すぐに商品化できるクオリティだと思います。(田中耕) ◆企画だけでなく、プレゼン能力も含めて評価しました。完全に楽しんで作っているところがいい。(中村) ◆トイレネタは他にもありましたが、プロモーションとして綿密に設計されているところが抜けていました。どんどん引き込まれるプレゼンも良かったです。(田中達)

1-click Award 2006の結果
1-click Award 2007の結果