1-click Award

「その発想はなかったわ」と言わせて欲しい。 中村洋基

カンヌ国際広告祭、ロンドン広告賞、東京インタラクティブアドアワード等で、数多くの受賞をしてきた、電通のテクニカルディレクター・中村洋基さん。昨年、1-click Awardのオマケクリックにも、カイブツさんとのタッグですばらしい作品を提供して下さいました。そんな中村さんに、現在のWeb広告に対する気持ちを語って頂きました。

広告と思われない広告を作ろう。

────最近、中村さんはどんなことを考えて、広告を作っていますか。

もちろん作っているときは、自分が作るものは100%面白いと思っているんですけど、一歩引いて考えると、中島信也さんがよくおっしゃっていることですが、「広告って、嫌われ者」ということを実感します。どんなに面白いサイトを作っても、広告だと、見てくれる人が少ない。僕でさえ、正直言って、心を動かされた広告キャンペーンサイトなんて、数えるくらいしかないですし。友達のブログのほうが、よっぽど感動することが多いし、よく見る。広告のターゲットって、だいたいが、僕よりもずっと広告に関心がない。彼らにとっては、広告ってかなり希薄な存在です。「広告なんて、要るの?」とさえ、思うことがあります。
そんなことを踏まえて、最近、特に心がけているのは、「広告とは思われないような広告を作ろう」ということ。広告とは思われないほど、「ユーザーが得するコンテンツ」を作らないと、「受け手の数がイマイチ少ない」という、マスメディアに対してWebが抱える永遠の課題を、ブレークスルーできないんじゃないか。それは、受け手がもらって本当に嬉しいものか?」と、いつも考えるクセをつけてます。……いま「広告」って、何回言いました?

「得」を作るということ。

────なるほど。「得になる広告」というのは、具体的にどんなものでしょうか?

たとえば、『The Last Guy』というゲームのプロモーションで「どこでもラストガイ」というサイトを作りました。バナーも何も掲出していませんが、リリース2週後で累計70万PVを超えてます。好きなWebページのURLを入力すると、そのページが『The Last Guy』のゲームのステージになって、遊べるというものです。そのページの画像を障害物として利用するので、ページによって、簡単な画面から超難関画面まで、いろいろな『The Last Guy』ができあがる。
これは「好きな場所で、タダでゲームを遊べる」という、わかりやすい「得」を作りました。そこまではできないサイトでも、工夫の余地はいろいろあります。
「UNIQRO TRY」は、ユニクロの『ブラトップ』という商品のキャンペーンサイトです。ブラジャーつきのタンクトップですが、普段つけなれているブラをはずす生活に、ちょっと抵抗があるという女性が多いんだそうです。そこで、すでにブラトップを使っている人たちの声を集めて、買うのを躊躇している方に、安心していただくサイトを作りました。でも、ただブラトップのことばかり話してもらっても広告っぽいので、「好きな雑誌は?」「好きな食べ物は?」など、女性が関心のありそうな質問をかなり混ぜています。こういう、ちょっとした「得」があるだけで、見て楽しいし、友達との話題にもしやすくなるじゃないですか。そういうことが大事だと思うんです。

技術よりもデザインよりも、大切なことがある。

────テクニカルディレクターとしては、技術も気になるんじゃないかと思いますが。

昔は、「ザ・リッチWeb広告」みたいなヤツを作りたい時期がありましたね。ハイレベルな技術を使った、カッコいいデザインのサイト。でも、今はそういうのにはあまり興味がないです。人に例えてみると、そういうサイトって、すごい服を着て、「オレ、カッコいいでしょ~」って街を歩いているような寒々しい感じもある。それでカッコいい人はいいんですけどね。

────なるほど。技術やデザインよりも大切なことがあるということですね。

はい。そういえば最近、ケータイ広告を作ることが増えているんですが、これはなかなか面白くて、1クリックでも少なくするためにどうするか、徹底的にみんなで議論するんですよ。当たり前ですよね。携帯サイトって、ページ増えたら超めんどくさいし、読みこみ遅いですもん。これはすごく本質的な議論。レベルの高い技術とかカッコいいデザインよりも、ずっと大切だなと感じる時があります。
そういえば、この前、「モバV」というケータイキャンペーンを作りました。Lil’B(リルビー)という女性2人組ミュージシャンのデビュープロモーション。今は顔を明かしてますが、はじめは一切顔を見せていなかったんですね。そこで、テレビCMを見てメールをするとPVが手に入れられるというコミュニケーションにしました。彼女達の顔がはじめて見られるチャンスです。ただし、そのメールには、顔写真を添付しなくちゃいけない。メールすると、Lil’Bの2人の顔があるべきところに、その人の顔が入ったPVが送られてくるという仕掛けです。結局、彼女たちの顔はどこにも入ってない(笑)。
これも、「人に見せて楽しい」という「得」になったらいいなと。これを知ったら、次は友達や彼氏や家族の顔を写真にとって、送っちゃいますよね、きっと。そうやって繋がっていった結果だと思いますけど、PVのDL数は一気に伸びました。

広告のことばっかり考えているヤツが、驚くものを!

────面白いおはなし、ありがとうございました。では、最後に一言、応募する方々にメッセージを!

僕は、たくさん応募しろとは言いません。1つの作品を作るのがどんなに大変か、知ってますから(笑)。逆に、一球入魂して欲しいと思います。いっぽう、ぼくらはプロの顔をして、想像力がせばまっている。広告のことばっかり考えているヤツに「その発想はなかったわ」と言わせて欲しいです。

中村洋基
インタラクティブ・コミュニケーション局
テクニカルディレクター / プログラマー

1979年生まれ。(株)デジタルステージ、ニッポン放送を経て、2002年より電通で、Flash ディレクション・制作業務に携わる。大手自動車メーカーのバナー広告で、クリック率33%という驚異的な数字を記録したことから、一躍、バナー広告の名手として注目を集める。東京インタラクティブアドアワード・ロンドン広告賞やカンヌ国際広告祭をはじめ、国内外で数々の受賞歴・審査員歴を持つ。