タイポグラフィの新しい可能性を追求し続けている、大日本タイポ組合。今年刊行された『大日本字』をめくると、その仕事の一貫性と多様性がわかります。タイポグラフィがお仕事の中心ですから、一見Webとはあまり関係なさそうに見えますが、塚田さんと秀親さんのコンビは、実はかなり昔からWebを利用されていらっしゃいました。
Webとのつきあいは、かなり古いです。
はじめまして。よろしくお願いします。
まず、お2人の、Webとの関わりをうかがえればと思います。
塚田 実は、黎明期からWebとは関係があるんですよ。大日本タイポ組合は1993年にできたんですが、しばらくは部活っぽい感じで活動していまして。95年に、僕らの作品ギャラリーをインターネット上に公開したことがきっかけで、いろんな人に声をかけていただけるようになったんです。
秀親 その後も、フォントのダウンロードサービスをやったりだとか、Webを使った展覧会に出品したりだとかしてきました。
塚田 今は、自分達のWebサイトのほかは、BCCKSで日記を書く程度ですけどね。
秀親 僕は、特定のブログを読むくらいです。もちろん、ニュースを見るとか、調べものには使いますけど。最近はWebを見るのが結構疲れるので、結局、本を読んでしまうことが多いですね。
エラーが減っていく世の中が、せちがらい。
そうですか。1995年といえば、かなり初期ですね。
そんなお2人が、今、Webで面白いと感じるもののは何でしょうか。
塚田 googleの「もしかして」が気になってます。検索ワードを間違えたときに、正しいワードを指摘してくれる機能ですけど、間違ってない時に、間違っている「もしかして」が出ることがけっこう多いじゃないですか。それがおもしろい。
どういうことですか?
塚田 エラーが減っていく世の中が、せちがらいんですよね。僕、Webの技術はずっと好きなんです。HTMLもJavaScriptもFlashもいじるんですけど、常に過渡期で、次から次へと新しい技術が出てくる。そして、進化するにつれて、ルールが整備されて、その結果エラーがぐんぐん減ってるじゃないですか。それに反抗して、昔はわざとエラーが出るサイトを作って、それがおもしろい!と思っていた時期もありました。今は、googleが間違うのがいい。その間違いかたを見て、楽しんでいます。
秀親 僕はそういう趣味はないですよ(笑)。
ありがとうございます(笑)。では、1-click Awardではどんな作品を見てみたいですか。
塚田 「Webの正しい使いかたではない使いかた」を見たいですね。エラーや間違っていることがおもしろさに繋がっているもの。
秀親 僕は、「こんなこと、できたんだ」っていうものが見たいかな。動く前の発想も大切ですし、動くところにもアイデアが欲しい。どちらもあって、はじめてWebというメディアが活きると思います。
塚田 僕も、もう1つは秀親と同じで、Webである必要があるものも見てみたい。僕らの作品を例に使うと、「PLAY」っていう作品を前に作ったんです。それは、Webと紙と、両方のメディアを使ったんですが、Webでこそ際立つ企画でした。そういう、Webならではというものはあると思う。
秀親 そういえば、BCCKSで今やっている「写真集公募展」で、女の子が音楽を聴いている写真がたくさんあって、それをクリックすると、彼女たちが聴いていた音楽がiTuneで聴ける、っていう応募作品がありました。そういうのも、Webならではですよね。
塚田 そうそう。
Webならではの作品も、Webっぽくない作品も、どちらも見てみたいと。
その二重性はとてもおもしろいですね。
街には、発見がある。
では少しお話しを変えまして、Web以外で何か、最近気になっているものはありますか。
秀親 僕は料理です。友達同士で食事をふるまう会がありまして、ちょうど明日は、僕が作る番なんで、今はその準備で頭がいっぱいです。今回は、明石焼きをフランス料理風にアレンジしようと思っているんですが。
塚田 僕はイグノーベル賞を獲りたい。
秀親 あれ、気象予報士じゃなかったっけ?
塚田 気象予報士もそうだけど、普段あんまり必要ないけどそこらじゅうにある知識っていいなぁ、と。一般的には「雑学」って言うみたいですけど。あと、この前五反田で、いい階段を見つけたんですよ。2つの階段がくっついているんですけど、段数が違っていて、1つは3段、1つは2段でピッタリ揃っているんです。あれはよかった。
階段がお好きなんですか。
塚田 そうですね。『東京の階段』って本があるんですけど、それがまたよくってねえ。
秀親 塚田は地図も好きですね。いつも見てますよ。
塚田 渋谷駅から事務所まで歩いて通いますが、近道探したり遠回りしてみたり、毎回道を変えて来るようにしてます。そうすると、それだけでも発見があるんですよ。
秀親 それは僕もわかりますね。僕は下町の方に住んでいるんですが、この前、行ったことのない裏道を通ってみたら、いい感じの区営アパートを発見しました。かなり年季が入っていて地面なんかいまだに舗装してなくて砂利のままなんですよ。猫がうろついていて、壁にゴーヤがなってる。東京なのに。
街歩き、楽しそうですね。今度、試してみます。
ネットを捨てよ、街に出よう!なんつって(笑)
では最後に、出品される方々に、一言アドバイスをいただけますでしょうか。
塚田 がんばったり、がんばらなかったりしてほしいです。
なるほど、意味深ですね。エラーも見たい、Webならではの作品もみたいという、
先ほどの発言につながるようにも思えます。秀親さんはいかがでしょうか。
秀親 視野を広く持つこと、でしょうか。インタラクティブなものって、Webじゃなくてもいろいろあると思うんです。実は僕らもインタラクティブをWeb以外のところで追求していて、たとえばコクヨと共同開発した『トイポグラフィ』っていう積み木のおもちゃがあるんですけど、昔は本気で、それをTDCのインタラクティブデザイン部門に出品しようかと思ったことがあるくらいです。きっと街にもインタラクティブはいろいろ発見できるはずですよ。区営アパートや階段みたいに。
アイデアはいろんなところに発見できるのですね。
楽しいお話し、ありがとうございました!
大日本タイポ組合
秀親と塚田哲也の2人で1993年に結成。日本語やアルファベットなどの文字を解体し、組合せ、再構築することによって、新しい文字の概念を探る実験的タイポグラフィ集団。ロンドン、東京での個展、バルセロナや東京での企画展に参加。2003年には、バルセロナ(スペイン)で設立10周年記念の展示会を開催し、同時に作品集「TYPE CARD PLAY BOOK」も出版。2008年には、これまでの制作の足跡を一気にまとめた本『大日本字』を出版。