数々の有名CMやヒット曲の作詞などを作られてきた、TUGBOAT・麻生哲朗さん。Webでも、Life Card「カードの切り方が人生だ」シリーズから「表参道あいうえお」まで、いろいろと活躍中…と思いきや、話は意外な方向へ進んでいきました。
ファーストアクションをさせるアイデアがないと、減点。
まずお聞きしたいのですが、麻生さんはWebをどう捉えていらっしゃるのでしょうか?
正直個人的には、Webは苦手なんですよ。YOUTUBEとかWikipediaとか、調べものをする時には使うけど、ブログも見ないし。結局、CMもWebも、人の心を動かせるかどうかが勝負だと僕は信じているんですけど、今のWebは、人の気持ちを前提に作られているとはどうも思えないから。
そうでしたか。それは意外です。
では、1-click Awardは、どのような視点でご覧になろうと思っていらっしゃいますか?
アイデアで突破して欲しいと思います。実体験から言うと、今のところ、Webで映像クオリティの高さを追求するのはムリ。画面も小さいし、あまり意味がない。「前略おふくろ様」って昔のTVドラマがあるでしょう。あれ、背景は書き割りなんです。でも、今見ても泣ける。それは結局、役者の力量や台本が突き抜けているから。そういうパワーをWebに注入して欲しい。結局、コアになるアイデアが何かってことを問いたいですね。
そのアイデアで、ファーストアクションを起こせるかどうか。それがなかったら、後のコンテンツの出来がいくらよくても、減点。心が動いたから、クリックするっていう順番で作って欲しい。それから最終的には、「これは自分でも作れるけど、そういえば今まで作ったことがなかった!」と僕達に思わせた人が勝ち。舞台はWebだけど、その視点はCMやポスターと一緒です。
Webというメディアを意識しすぎたら、うまくいかない。
Webが苦手ということでしたが、Life Cardは素晴らしかったです。
あの広告で僕は一瞬だけ「Webに強い人」ってことになってしまったんですけど、あれもWebだからって特別なことをしたわけじゃないです。あの時は、クライアントのためにどうしてもWebに人を連れてこないといけない状況だったので、「Webに絶対行きたくなるCMって何?」という問題を、まず考え抜きました。結論は、結局それは「面白いCM」だと(笑)。「これ、続きが見てみたい!」と感じてもらえるようなCMで、初めて人はWebに行くだろうと。「続きはWebで」という、作法から考えるのではなく、CMが面白けりゃ成功する!ってことでやりました。
あの時にも感じたことですけど、Webっていうメディアの特性とかを意識しすぎると、うまくいかないですよ。さっきも言ったように、WebもCMも、心を動かすアイデアがあるかどうかが勝負だから。
結局、Webが他のメディアに取って代わるとは思えない。
Webはそれほどご覧にならないということでしたが、
どんなWebだったら使いたいと思われますか。
う~ん、それはよくわからない。結局、Webと他の世界が、どんな住み分けに落ち着くのかがよくわからないから。でも、Webが他のメディアに取って代わるというのは少なくともウソだと思う。よく、「CMは大丈夫か?」とか「Web時代のCMとは?」とか質問されるんだけど、僕は今のところ、自分の仕事が脅かされていると感じたことはないですね。CMはCM。WebはWeb。どっちも必要でしょう。iTuneも使うけど、CD屋にも行きたい。皆、そうなんじゃないかな? そうそう、最近iTuneで音楽を買うと、ジャケット写真がついてくるようになったでしょう。あれが無性にうれしかった。それで、実は楽曲という情報だけじゃなくて、ジャケットという形も欲しいんだってことに気づいたんですよ。Webの中にいながら、「手触り」を求めてる。本質は何なのか。音楽なのか、ジャケットなのか、CDなのか。ますます、僕にはわからなくなりました。
ただ、Webは情報の量を求めるときに行く場所と早く情報が欲しい時に行く場所が、もっと整理されたらいいとは思う。それが整理されれば、もう少し使いたくなると思います。
Webであることを忘れさせたら、成功かもしれない。
では最後に、1-click Awardの皆さんにメッセージをお願いします。
Webってことを意識しないで楽しませてくれたら、嬉しい。Webであることを忘れるくらいの感動や驚きが欲しいですね。
本当にお忙しいところ、貴重なお話しをありがとうございました!
麻生哲朗
TUGBOAT
CMプランナー
1972年福岡生まれ。1996年早稲田大学卒業、電通入社。1999年クリエーティブ・エージェンシーTUGBOATを設立。2004年春、初原作・脚本の映画「THE HOTEL VENUS」が公開。主な仕事に、サントリー南アルプスの天然水、サントリーなっちゃん、ドラゴンゲート(作詞家)、大塚製薬カロリーメイト(がんばれワカゾーシリーズ/そこは持っとかないと。シリーズ)、大和証券グループ、キリンビバレッジ「アミノサプリ」「極烏」、パイオニア「カロッツェリア」「DVD楽ナビ」、明治製菓「ショパン」「キシリッシュ」、ライフカード「カードの切り方が人生だ」シリーズ、NTT DoCoMo「DoCoMo 2.0キャンペーン」、日本自転車振興会「9ways」など、作詞や脚本をはじめとしたCMプランナーの領域を超えた幅広い活動を展開している。