1-click Award

1-click Award用に作品を作るの、やめましょう。 田中偉一郎

「ハト命名」「ストリート・デストロイヤー」「こけしいきいきマリオネット」…。誰もが笑える美術作品を作り出してきた、田中偉一郎さん。果たして、田中さんはどんなことを考えて作品を作ってらっしゃるのか。1-click Awardでどんなものを見てみたいのか。いろいろと伺いました。ちなみに、インタビュー中は、スタッフ一同爆笑の連続。その臨場感が、ちょっとでも伝わったら、嬉しい限りです。

「コイツアホやな、ヤバイね」という評価がうれしい。

────なぜ今回、田中さんに審査員をお願いしようと思ったかというと、ずっと前に展覧会で見て以来、僕がファンだからです(笑)。「六本木クロッシング2007」ではオーディエンス賞に輝いていらっしゃいましたが。ウチの奥さんも「コイツ、アホや!」って1票入れてました(笑)。

ありがとうございます。アホだとか、ヤバイとか、そう言われるのがうれしいです(笑)。正しい反応だとも思います。

────あの作品は、なんのために作ってらっしゃるんですか(笑)?

難しい質問ですねえ(笑)。結果的には、自分が見たいものを作っていると言えなくもないですけど。できたものを見せてるというだけなんですよね。。。見たくないものは作らない。見たいものを作る。そういう想いはあります。なんのためなのかはわかりません。

────作品の作り方は、どんな感じのプロセスなんでしょうか?

なんとなく日ごろの思いつきがバーっと並んでいます。で、それをふるいにかけるんですけど、意味がありそうなものとか、メッセージがありそうなものとか、批評されやすいものは全部カット。一切、やりません。あまりにも意味がなくって、もうどうしようもないものを形にします。そのほうが、自分もラクだし、見るほうもラクに見れるような気がします。別に、作品見てもらって作者の意図を思われても、意図、ないし。

忘れる能力をフルに活かしたい。

────(笑)作るときに注意していることって、あるんですか?

ああ、できるだけ脳みそツルツルの状態を作ることですね。っていうか、覚えてきたことを全部忘れたいんですよ。たとえば、このチラシが紙でできているってことすら忘れたい(笑)。今、ここでインタビュー受けてるんですけど、これがインタビューであることも忘れて、なんでここにいるのだろう?帰ろう。何人か人がいるけどまあいいか(笑)っていうくらい、素の状態に戻って考えたいです。
特に日本人って、幼いころから、ず~っとだいたい同じレールに乗ってるわけです。小学校行かない人なんて、ほとんどいない。その経験を使っている限り、同じ様~な社会の中での理屈が合うものしかできないと思います。人間には幸いにして忘れる能力が備わっているわけだから、その力を最大限に発揮して、片っ端から忘れちゃいたいんです。で、その脳みそツルツルの状態で今ここに現れたとして、つくられるものを見てみたい。つくるための準備をわざわざしないのが理想です。面倒なの嫌いなんです。製作過程のストレスや意気込みが、作品に出るの嫌ですし。

それ以上でも、それ以下でもない。

────ところで、Webはご覧になりますか?

見ます。生活するために必要な情報は、ほとんどWebで見てます。あと、検索が昔から好きです。たとえば、「あべこべ」って入れると、ページ検索だとまあフツーに「あべこべ」に関する情報が並びますが例えば、画像検索にしてみると「あべこべ」の画像、けっこう変なものが出てきます。そういう意味のない検索で遊んでます。

────最近おもしろいWebサイトはありましたか?

おもしろいWebサイトは、あまり記憶にないです。人工的に計算・管理されたり目的のある世界ですから、おおかた予想ができちゃいますし、驚きを感じたサイトも特にありません。そもそも僕は、「問題や発見→企画→設計→制作→アウトプット・・・」という段取りのある作り方をされたものは、あまり好みじゃないんです。それこそ本当に無駄なものができると思います。今ある環境でちょっと手を伸ばして、あとは自然にできちゃうのが正しいもののできかただと思っています。たとえば、金魚に毎日エサをやるとして、そのエサが毎日少しずつ隣の植木鉢にこぼれるとします。で、そのエサが植木の土に染み込んでいくと、咲く花の色が変わってくる。本当に色が変わるかどうかは知りませんけど(笑)、たとえばそういう成り立ちが好きです。作品も、そうやって「できてしまう」のが理想です。

────ああ、作品を思い返すと、とてもよくおっしゃることがわかります(笑)。

「どうでもいいもの」。「意味のないもの」。僕の作品は、それ以上でもそれ以下でもないです。

うさぎのオブジェでも作っちゃえばいいんですよ。

────では、1-click Awardに出品しようとする皆さんに、メッセージをお願いします。

1-click Awardの募集要項とか、審査員の言葉とか、過去の受賞作とか、醸し出す雰囲気があると思うんですが、そういう「場の空気」を読まないで欲しいですね。1-click Awardに受賞するために作品を作るっていうのが、一番おもしろくない。そういうことは「忘れ」ましょう。極端なこといえば、「なぜか最近、紙粘土でうさぎのオブジェを作りたい」と思ったら作って、送ればいいんです。背中が貯金箱になってたりするヤツ。

────(笑)それはさすがにWebじゃないので…。

そうですか。まあ、そのくらいのスタンスで考えたほうがいいと思います。コンペの空気でなく、自分自身や世の中や身の回りの空気を読んでください。僕としては、予想だにしないものが見たいです。それが偶然WEBのコンテンツとしておもしろくできちゃったり、webでないと成り立たないものだったりしたら、よりいいですけどね。くれぐれも、場の空気は無視したほうがいい。

────それは、その通りだと思います。

そうなってくると・・・今この場で言っちゃったし、うさぎのオブジェは禁止。それ以外なら何でもいいんじゃないでしょうか(笑)。

田中偉一郎

1974年生まれ、うお座、B型、美術作家。2000年以降、写真、動画、オブジェ含めいろいろな作品を発表。コンペということでいえば、昔、アーバナートでPCの作品で優秀賞受賞。2007年には、「六本木クロッシング〜未来への脈動〜」にてオーディエンス賞を獲得。また美術手帖の連載「やっつけメーキング」、工作本「スーパーふろくブック(コクヨ)」ほか、印刷物でも何だか分からない何かを乱れ打ちしている。